『墨攻』感想(ネタバレあり)

かつて『トップガン』が、
トム・クルーズ抜きでは成り立たないように、
この『墨攻』もアンディ・ラウ抜きでは成り立たない映画です(笑)。
素材は非常にいい。
墨家」という戦闘集団。
戦闘集団ながら、「兼愛」を説き「非攻」を説く思想家たちでもある。
ホームページに「墨家十論」というのが載っています。

「兼愛」・・・自分を愛するように他人を愛せ
非攻」・・・侵略と併合は人類への犯罪
「天志」・・・天帝は侵略と併合を禁止する
「明鬼」・・・鬼人は善人に味方して犯罪を処罰する
「尚賢」・・・能力主義で人材を登用せよ
「尚同」・・・指導者に従って価値基準を統一せよ
「節用」・・・贅沢を止めて国家財政を再建せよ
「節葬」・・・贅沢な葬儀を止めて富を蓄えよ
「非楽」・・・音楽に溺れず勤労と節約に励め
「非命」・・・宿命論を信ぜず勤勉に労働せよ

この物語の軸は二つであろう。
一つは、「兼愛(博愛主義と言ってもいい)」の墨家・革離が
逸悦(ファン・ビンビン)との関係の中で
「兼愛」を離れ一人の女性を愛するようになる話。
もう一つは、巷淹中(アン・ソンギ)との智略を尽くした対決。


これらがもっと深く描いてくれると話としてはもっと面白くなると思う。
墨家は”兼愛”を説くけれど・・・」という台詞もありますが、
革離が「兼愛」を説いているイメージはない(笑)。
やたらと印象に残るのは「モノを貰わない」ということ(笑)。
もっと物語の前半などで「兼愛」を説く革離を描いて
後半への葛藤へと繋げて欲しかった。
唐突に説明不足で「兼愛」が出てきたような気がします。
そして、巷淹中(アン・ソンギ)との智略を尽くした対決についても
戦闘シーンは比較的あっさり流れているような感じで、
丁々発止の智略対決という印象に薄い。
せっかくアン・ソンギというシブい役者さんを使ってるのだから、
アンディ・ラウともっと対比や智略のぶつかる点を描いて欲しかった。
もっとライバル感を出して欲しかった。


梁王(ワン・チーウェン)との関係も重要な点ですが、
まあ、梁王との関係は特に軸とは呼べないか(笑)。
すでに嫌な感じの演技で演じられてますし(笑)。


と言うことで、この映画。
戦闘シーンはなかなかの迫力ですが、近年の大作映画に劣り、
主人公の格好良さに依存する点は『トップガン』と同じだが、
音楽で劣り(本作は重厚な音楽ではあるのですが)、
歴史モノながら『LOVERS』のような色彩感覚もない。
地味だ(笑)。
シブいと言えばシブい。
その中でアンディ・ラウの格好良さが光る。
アンディ・ラウの格好良さが映画の魅力の7割(笑)。
ストーリーも決して退屈ではないのですが、
敢えて忙しい時間を割く価値があるかどうか。
お暇なら観てみることをオススメします。