読了『ローマ字日記』
数日前、
石川啄木とんでもねえ野郎だ!
と書いた本の感想ですが、読了後にもそれほど変わりませんでした(笑)。
- 作者: 石川啄木,桑原武夫
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1977/09/16
- メディア: 文庫
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実際には、その後のページ(和訳と言うのでしょうか?)を読みました。
この内容について、要約を書いてみます。
啄木の1909年(明治42年)の4月〜5月の日記です。
要約の前に、啄木の詩を幾つか見てみましょう。
東海の小島の磯の白砂に
われ泣きぬれて
蟹とたはむる
たはむれに母を背負ひて
そのあまり軽きに泣きて
三歩あゆまず
はたらけど
はたらけど猶わが生活楽にならざり
ぢっと手を見る
この辺りが代表的なところでしょうか。
非常に哀愁漂う叙情的な詩であります。
ワタシは、啄木は彼の容貌とも相まって
このように社会の底辺でつつましく生きた人であったと思っておりました・・・。
が
以下より、要約(大して要約にもなってないですが・・・)に入ります。
その前に、前提条件として
- 啄木は老母と妻と幼い娘を函館に置いて
東京に出てきたようで、「キョウコ」とは啄木の幼い娘の名前です。
(妻は函館で働いていたようです)
- 啄木は、東京で校正の仕事をしており、
昼頃に会社に行って、夕方には帰れたようです(その代わり日曜出勤もある)。
- 月給は25円。当時の物価が分かりませんが、
ワタシは単純に当時の1円=現在の1万円として換算して読みました
■要約■
4/13(火)=函館の老母から手紙が届く。
「至らないながらも子守や賄いをしておりますが、
キョウコ(啄木の娘)も日々成長し私の力では及びかねます。
そちら(東京)へ呼ぶことはできませんか?
今月の6日、7日には風雨強く、家は雨漏りし
居るところがなく悲しみにキョウコも泣き、立ち尽くし
なんとあわれなことと思います・・・。
今は小遣いもなく1円でも良いので送って下さい。
いつ頃、東京にお呼びくださるか。知らせて下さい。
返事がない時は、皆で揃って参ります。
用意をしておいて下さい・・・。
函館にはいられませんので、これだけ申し上げます・・・」
自分(啄木)には家族を東京に引き受けて
養うという重い責任を果たす当てがない。
悩みで頭がまとまらない。会社を休む。
4/14(水)=病気届けをやって今日と明日会社を休むことにした。
小説3枚進む。
4/15(木)=松坂屋へ物を質入。2円50銭借りる。
50銭は先に入れていたものの利子として支払う。
江戸時代の好色本を深夜3時頃まで写す。
4/16(金)=10時半頃起床。
1円を母に送る。
好色本の写しの続きをやる、会社を休む。
写本は深夜2時まで。
4/17(土)=10時頃、人に起こされる。
小説を書くために会社を休む。
ノートに3枚小説を書く。
深夜1時就寝。
4/18(日)=早めに起きる。
妻より手紙が届く。
「娘の身体の具合がよくないので医者に診せました。
慢性的に胃腸が弱いとのこと。
あなたが居ないので心細いです。手紙を下さい」
会社に行く。
5日も仮病で休んだので、会社の敷居は高い。
4/19(月)=9時起床。小説5行ほど書く。
12時に出社。
4/20(火)=小説2枚書く。
会社に行く。定時退社。夜9時まで映画を観る。
4/21(水)=12時出社、18時退勤。
4/23(金)=6時半起床。出社。
タバコも吸えないほど忙しい。
4/25(日)=会社へ行って月給を貰う。月給は25円。
先月は全額前借金に取られたが
今月は、前借金が18円だったので差引7円の現金支給。
電車の回数券(20枚分)を買う。
江戸時代の遊郭・吉原を冷やかす。
浅草へ行って牛肉を食べて帰る。
帰って隣室の金田一君に向かって
「浅草は単に肉欲の満足を得るところだから誰でもいいが
吉原なら美しい女と寝なければいけない」
と一席ぶつ。
4/26(月)=友人の並木君より「時計を今月中に返して欲しい」という葉書。
その時計は質屋に入っている。
死のうか死ぬまいか悩む。
地元の友人が、家族を東京に送ってくれるという
旅費などは心配しなくていいと言う。
気分は暗い。
金田一君と8時に下宿を出て浅草へ。
オエンという女と寝る。
3円を使った。
4/27(火)=会社に出社。
月給を前借しようか悩んでいるうちに定時になる。
夜、金田一君に呼ばれて日本橋で芸者を交えて宴会。
1円使った。
4/28(水)=会社に行って、月給の前借を頼む。
来月にならないと借りられないと言う。
現在、手元の現金は5厘銅貨が1枚。
明日の電車賃もない。
4/29(木)=会社を休む。
隣室の金田一君が
「電車賃がないから会社に行けないんじゃないか?」
と聞きに来る。
「今日はバカに興が湧いてきたんです!」と答える。
終日、小説を執筆。
4/30(金)=会社を休む。
小説を書く。
下宿代の催促がある。明日の晩まで待ってもらう。
金田一君が2円50銭貸してくれた。
5/1(土)=会社に行った。
来月の月給まるまる25円の前借が出来る。
先月のタバコ代1円60銭を清算。
午前中に、友人の並木君から時計の催促。
18時半に退勤。
時計を質から出すか、下宿代20円を払うか悩む。
死のうか死ぬまいか悩む。
「時計か下宿代か決めねば帰れない」思いながら浅草へ。
ハナコという17歳の女(売春婦)と寝る。
5/2(日)=下宿代の催促。20円を支払う。
地元の知り合いの息子とその友人の二人が訪ねてくる。
下宿などを世話し手付金1円を払い、天ぷらを食べる。
会社を休む。
財布がカラになる。
5/3(月)=会社に病欠届け。
1日寝て暮らす。
5/4(火)=今日も会社を休む。
色々書こうとしたが書けず。
夕方、友人の並木が来る。のんきなことばかり言って帰した。
5/5(水)=今日も会社を休む。
書いて書いて”手を見つつ”という散文を一つ書き上げる。
5/6(木)=今日も会社を休む。
「このままではどうにもならない!」と思い
「あと1週間ほど会社を休んで書こう!」と思う。
書くために、先日下宿を世話した地元の知人の息子宅へ。
結局、二人の話を聞くばっかりで何も書けず。
今月は月給を前借したので収入のアテもなく
来月は家族が上京してくる!
今、底にいる!と思う。
ここで死ぬか、ここからあがっていくか二つに一つだ!と思う。
そして下宿を世話してやった二人の青年を救うのだ!
5/7(金)=7時頃起床。古本屋に本を預け80銭を得る。
ランプと床机(?)とタバコを買う。
小説を10枚、『一握の砂』を書き始める。
(要約終わり)
え〜・・・どっから突っ込んでいいのか悩みますが・・・(笑)。
ワタシも大概な仕事の仕方をしておりますが、ここまでひどくはない!(笑)
会社休み過ぎです!(笑)
はたらけど はたらけど・・・
って、そんなに働いてませんから!(笑)
猶わが生活楽にならざり
って、その割りには売春婦を結構なペースで買ってるし、
月給を前借した(5月1日)その次の日(5月2日)には財布がカラになってるし。
(どれだけ下宿代を滞納していたのか・・・)
借りた時計は返そうとしないし、
家族が来ると言っては「重い責任を果たす当てがない」と
フラフラ浅草行って遊んでるし・・・とにかくストレスに弱そうな人ですな(笑)。
この日記はすべてローマ字で書かれていたようで、
ローマ字で書いた理由は「妻には見せられないから」だったようです(^^;。
だから妻が読めないであろうローマ時で書いた、と・・・。
・・・おいっ!(−−;
そして、これは彼のせいではないとは言え・・・
この風貌!
こんな虫も殺さぬ風貌で、こんな生活を送っているとは・・・。
もう善人顔の陰で、あんな生活を送っていたのかと思うと・・・
ジキルとハイドのようなギャップを受けてしまうわけですよ!
これらの思いを総合すると・・・
石川啄木とんでもねえ野郎だ!
になってしまうのです・・・(^^;。