読了『自省録』

マルクス・アウレリウス「自省録」 (講談社学術文庫)

マルクス・アウレリウス「自省録」 (講談社学術文庫)

西暦161年にローマ皇帝に即位した
マルクス・アウレリウスの書いたものが
現代の、しかも日本語で読めるだけでも感動ものです。


人皇帝とも言われるマルクスの思想は
ストア派に属するようですが、
ここまでの高い魂を持てるのなら、
ワタシもストア派に入門したいくらいです。


全編を通して語られるのは、この世の儚さ。
現代で言えば、仏教の思想にも通じそうな無常観です。


そして自分の身を律するのは、自分自身だという
自分への厳しさ。

おまえについて「素朴純一な人間でない」とか
「善良な人間でない」とひとの言うことばが真実であるなど、
それが誰からであれ、けっしてありえないようにせよ。
    (中略)
このことはすべておまえ次第なのだ。
おまえが善良であり素朴純一であることを
妨げるであろう者が誰だというのか。


また、人の賞賛を求めない心を持つように説く場面では、

ひとが何をなしたり言ったりしようとも
私は常に良き者であらねばならぬ。
あたかも黄金やエメラルドや紫貝が常にこう言うであろうように。
すなわち、
「ひとがどうしようとあるいはどう言おうと
 私はエメラルドであり自分の色を保持しなければならない」と。

と言う。


このような思索のかたわら、ローマ皇帝としての責務を果たし
五賢帝の一人に数えられる実務家であり、
蛮族と戦い、ついには外征先で死去するに至る。
享年58。


『自省録』を読む限り、100%賛同はできないにせよ
気高い魂の持ち主であり、有能な人物であったようだ。
哲学者としては二流・三流との評価もあるようだが、
皇帝の責務と同時に行えるレベルとしては非凡な才能と言えるでしょう。


ただ、この講談社学術文庫の訳は
原文のせいなのかもしれませんが、言い回しが冗長で意味が取りにくい。
例えば、上記の引用部分

ひとの言うことばが真実であるなど、
それが誰からであれ、けっしてありえないようにせよ。

とは、要するに
「誰からそう言われようと、それが決して真実でないようにせよ」
辺りの、多少は意味の取りやすい言葉にできなかったのか。
そこが残念。
この訳では、広く読まれることはないでしょう。
本書は第一刷が2006年と比較的新しいんですがね・・・。
翻訳家の方は、鈴木照雄さん。
1918年生まれ、とのことですので・・・
多少言葉や言い回しが古めかしいのでしょうか。
岩波版は見ておりませんので、どちらが良いとは言えないのですが・・・。


とりあえず、書いてある内容は面白い。
1800年近く前の人が書いたものだから・・・
という理由だけで敬遠するには惜しい。
ワタシも少し気高く生きてみたいと思える本でした。