読了『ロボット』

”ロボット”という言葉が初めて使われた作品。戯曲です。

ロボット (岩波文庫)

ロボット (岩波文庫)

物語は・・・ネタバレかもしれませんが(小品なのですぐにネタは割れますが)、
ロボットを作り出した人間は、
労働から解放され、自己実現のために人生を費やせるはずだった。
だが、ロボットが思考能力を持ち、最後の一人を除いて滅ぼされる。
そして、人間を滅ぼしたロボットもロボットを再生産することができず、
滅びの時を迎える・・・。


というような話です。
最後は、多少の希望が持てそうな終わり方ですが。


ここで描かれる”ロボット”は、
人間の体から、労働に不要なものをそぎ落とし
人工の神経や筋肉を合体させて作った・・・ロボットというよりは
人造人間のようなものとして描かれております。
生殖能力を持たぬために、工場以外の場所で殖えることができず
人工生命製造の秘密を失ったために、滅亡に向かっていく・・・
という設定でした。
戯曲ですから、舞台で上演されてたみたいなんですが、
本の途中に出てくる、初演時の役者の格好を見ると、
相当に笑えます。
人間が服を着て番号の書かれたゼッケンらしき物を身に付けている・・・
これが”ロボット”か、と。
1920年初版ということからすると、相当に進んだ考えだったのでしょうけど。


興味深かったのは、
作者・チャペックによる”ロボット”という言葉が
どうして出来上がったのか、についての記載をまとめたもの。
作者がこの作品の構想を兄に話し、
労働人造人間を何と名付けたら良いだろう?と相談したところ、
おざなりに
「じゃあロボット(robot)にしたら?」
と言われたらしい。
チェコ語で”賦役”を意味する「robota(ロボタ)」から、
「a」を取っただけらしい。
せき止め内服薬の名前を「セキピタン」にする小林製薬のようなノリ(笑)。