読了『愛してるなんていうわけないだろ』

恋愛は勝ち負けだと言う角田光代さんのエッセイ集。

愛してるなんていうわけないだろ (中公文庫)

愛してるなんていうわけないだろ (中公文庫)

この本は、角田さんが若い頃に書いたエッセイのようで、
デエト(本文ママ)や恋愛の話など多し。


印象に残ったのは99ページ「なんてたのしい占い」。
ワタシは以前、前世占いだのイタコだの霊媒師だの
そういうものを全く信じておらず(今も信じてはいませんが)
認めてもいませんでした。
ですが、
ある時にイタコが亡き父を降霊し
家族に許しの言葉を告げるシーンをテレビで見て考えを改めました。


亡くなってしまった方など、
人間の手の届かないところへ行ってしまった人へ
何らかの心残りがある”生きている人”。
その人へ人智を超えた”慰め”を与えるのがイタコなら
それはそれで意味のあることだ、と。


降霊をネタに詐欺を働くような輩は論外ですし、
くどいようですが、ワタシ自身は降霊などを信じることが出来きませんが
友達などのアドバイスでも心理学でもなく、
亡くなった方からの言葉という形でしか癒されない人がいるのなら、
それを癒すための人も居ていいのではないか。
自分がそれでは癒されないからと言って、
他人が信じているものを、これ見よがしに踏みつけにしなくても
良いのではないかと思うようになりました。


この辺りのことを角田さんが
占いということをベースにうまく書いています。

たとえば、ある一年立て続けに三十回失恋をし、
その反動で十キロ太ってしまい、
仕事も進まずへまを繰り返し、
人間関係もぎくしゃくしていたとしよう。
こんな不幸ものは私だけだと必ず思い込む。
そんなとき、
天井からロープをつるす前に、
占いのページを見ていたら
「この一年、あなたは天中殺です。何があっても諦めて下さい」
一言そう書いてあれば、「ああ、そんなものか」と不思議に納得して、
ロープを取り外すんじゃないだろうか。
しかも悪い年の後は必ず、マシな一年が用意されているはずで
「じゃあ来年まで待ってみよう」ということになる。


     『愛してるなんていうわけないだろ』−なんてたのしい占い

こういう意味でなら、イタコも占いも存在意義がある。
ただ、やたらとタカリと言うか占いの衣を来た脅迫と言うか
何か物を買わないと祟られるとか、そういう話が多過ぎると思うのだ。
そういう者は憎むべし。
何だか矛盾してるような気もしますが
そういう「占い」を見抜く目を持って占いを信じてみてはどうでしょうか。