読了『重力ピエロ』

最近、読んでいる伊坂さんの作品。

重力ピエロ (新潮文庫)

重力ピエロ (新潮文庫)

美形の弟を持つ兄が主人公。
その兄弟と癌に冒された父の物語。
三人は立て続けに起こる放火事件に首を突っ込んでいくが・・・。
ちょっと切ないお話。


相変わらずグイグイ読ませるストーリーと文章。
洒脱な会話、ニヤリとする比喩、多彩な話題、
微笑を誘う程度のユーモア。
それらの魅力以上に惹かれる「切なさ」。
最初から名作っぽい雰囲気が漂い、
結果的には伊坂氏の作品で一位、二位を争う作品です。
これと一位を争うのは『アヒルと鴨のコインロッカー』。


作品の出来と関係ない話ですが、
本の最後に書いてある”引用文献”に
自分の読んだ本があると少し嬉しいもんですね(^^)。
今回は、前にワタシも読んだことがある

フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで

フェルマーの最終定理―ピュタゴラスに始まり、ワイルズが証明するまで

フェルマーの最終定理』が引用文献に挙がってました。
ああ・・・同じ本を読んで
こんな小説にまとめられる人(伊坂さん)と
何にも活用できてないワタシ(笑)。
人の能力には差があるもんだ・・・。


ところで、
伊坂作品は大いなるマンネリであると感じる時があります。
伊坂作品には、巨悪がある。
それを許せぬ者があり、
彼(または彼女)は何かの犠牲を払い、
時には自らの命と引き換えに巨悪を葬る物語である。


以前、ヘミングウェイに出てくる主人公を
”コードヒーロー”と評した文章を読んだことがあります。
”コードヒーロー”。
自分の中に確たる譲れぬ基準(”コード”)を持ち、
その譲れぬ一線を守り生きる者。美学を持つ者。名もなき英雄。
それに通じるものを感じました。